リーンキャンバスを書いて新規事業を俯瞰する

リーンキャンバスの活用は、プロダクトの簡潔な説明や、事業アイディアの検証にとても役立ちます。聞いたことはあるがよくわからない方や、作り方を詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。

まずはじめに、この記事のターゲットとなる方と、この記事で説明しないことを記載します。

ターゲットとなる方

  • 新規事業のアイディアは浮かんだが、本当にうまくいくかどうか不安な方
  • 事業計画書の作成に疲弊しており、短時間でもっとわかりやすいものを作りたい方
  • 開発会社やステークホルダーにプロダクトの肝となる部分を簡潔に説明したい方
  • リーンキャンバスについては知っているが、具体的な書き方を知らない方

説明しないこと

  • リーン・スタートアップ、MVP について

上記については、下記の書籍に説明を譲らせていただき、以後はリーンキャンバスの有効性とその作成方法について説明させていただきます。

リーンキャンバスを書く意味

ありがたいことに、mofmofでは、新規事業やMVP作成について、多くのご相談を頂いております。ご相談の内容は多種多様であり、どれも面白そうな案件ばかりなのですが、プロダクトの内容に関わらず、下記のような項目が重要なのではないかと考えています。

  • プロダクトのターゲットは誰か
  • ターゲットが抱える課題と、そのソリューションは明確か
  • 既存プロダクトとの差別化要因は何か
  • どのように顧客へアプローチしていくのか
  • ゴール(主要指標)は定まっているか
  • リスクの見極めはできているか
  • etc

これらの項目が重要と考える理由としては、「このプロダクトは成功するのか」の確信度を高くしてくれることや、向かう先(ゴール)がはっきりすること、などが挙げられます。これらは、プロダクト開発チームのモチベーションや、開発のスムーズな開始のために重要な要素です。

素晴らしいアイディアが浮かんだ時、「これなら行ける!」と感じたら、いち早くプロダクトを世に出したいと思うだろうし、それが経験や実績によって裏付けられた感覚であれば、周囲を納得させることもできると思います。

しかし、同時に「これで本当に大丈夫なのか?」「勢いだけでスタートしていないか?」という疑問や不安も浮かんでくるのではないでしょうか。

では、アイディアが浮かんだだけ、という状態でも、プロダクトに論理的/体系的な裏付けを与えることはできないのか。ここではじめに思いつくのは、「事業計画書」の作成だと思います。しかし、事業計画書の作成は想像以上に時間と労力が必要となる作業です。

もっと簡単に、短時間で、しかもわかりやすく人に説明できる形でできないか。これらの課題を解決してくれるものが、今回のテーマ「リーンキャンバス」です。リーンキャンバスは、私達のような開発会社への相談時にはもちろんのこと、他のステークホルダーに対する説明にも、とても役立ちます。成功のキーとなる要素のまとめを、素早く/漏れなく/簡潔に作成することができるからです。

では、この一体リーンキャンバスとはどのようなもので、どうやって作ればよいのでしょうか。これから以下に説明していきます。

リーンキャンバスとは

リーンキャンバスは、LEANSTACK の創始者であるアッシュ・マウリャが設計したビジネスモデル図です。 彼がこれを設計をした理由は、leanstackのリーンキャンバスページ に記されています。

「事業計画書は、長すぎて書ききれず、めったに更新されず、そしてほとんどの場合、誰にも読まれません。しかし、仮説を文書化することはとても重要なことなのです。」

事業計画書を使用せず、短時間で簡潔な文書をどうすれば作成できるのか。アッシュは、以下の要素を1ページのキャンバスに表現することで、MVPプロダクトの作成で重要となる点を、作成前に洗い出すことができると主張しています。

  • ① 顧客セグメント ・・・ 課題を抱えている(ターゲットの)顧客
  • ①’ アーリーアダプター ・・・ 一番はじめにプロダクトを使ってほしい具体的なターゲット像
  • ② 課題 ・・・ プロダクトによって解決したい課題
  • ②’ 既存の代替品 ・・・ 類似プロダクト/サービスがある場合、それらを記載
  • ③ ソリューション ・・・ 課題を解決する方法
  • ④ 収益の流れ ・・・ 収益モデルや収益源を記載
  • ⑤ 独自の価値提案 ・・・ 既存プロダクトや類似サービスとの差別化要
  • ⑤’ ハイレベル・コンセプト ・・・ X for Y で「例え」を記載
  • ⑥ チャネル ・・・ どのように顧客へリーチするか
  • ⑦ 主要指標 ・・・ このプロダクトで達成したい目標(KPI/KGI、AARRRなど)
  • ⑧ 圧倒的な優位性 ・・・ 簡単には真似できない、このプロダクトの強み
  • ⑨ コスト構造 ・・・ 顧客獲得コストや流通、ホスティングにかかるコスト、人件費など

キャンバスの作成は、事業計画書と比較し、下記メリットが挙げられます。

  • 短時間で作成できる(後述しますが、正確には「短時間で作成するべき」です)
  • 他者への説明が簡単にできる(作成するだけでピッチができる)
  • 読み手にとっても優しい

アイディアをこれらのキャンバス各要素の仮説に落としこむことで、仮説の検証をしやすくしてくれます。ビジネスキャンバスを元に作成されたこれらの要素は、MVP作成で重要となる点を網羅しており、かつシンプルに書けるよう設計されています。

リーンキャンバスの作成方法

まずはじめに、作成にあたっての前提を説明します。9項目それぞれの詳しい書き方については後述します。

  • 空欄OK

「わからない」ということも事実ですので、空欄は問題有りません。また、リーンキャンバスは「1回書いたら終わり」というドキュメントではなく、常に更新されるべきものですので、後で埋める、でOKです。

  • 短時間で一気に書き上げる

慎重になりすぎず、正しい/誤りを気にしすぎず、時間を決めて、15〜20分、最大でも30分程度で、一気に描きあげてください。

  • シンプルに描く

キャンバス自体が短文でしか書けないように設計されているため、あえて言及する必要もないですが、短文で簡潔に書きましょう。長文となったら項目を分け、箇条書きのような形にするのがベターです。

リーンキャンバス 各項目の書き方

続いて、9項目の書き方について説明します。それぞれ具体例を添えますが、絶対的な指標ではないので、参考程度にご確認ください。

① 顧客セグメント

  • 課題を抱えている人は誰か、誰のためのビジネスなのかを記入する
  • 可能な限りセグメントを絞る(全ての人のためのサービスは、結果的に誰のためにもならない)
  • 顧客数を獲得するよりも、 課題を持つ顧客から学習し、ソリューションを見極めることを優先する

例)学生/訪日観光客/英語を勉強したい人、など

①’ アーリーアダプター

  • 自分の身の回りで当てはまる人をイメージする
  • リーンキャンバスができたら、そのサービスについてどのような印象を持つか、ニーズを把握するためにインタビューを実施しますが、そのターゲットとなるような人を描く。

例)就活中の男子学生/複数回の訪日歴があり、東京や大阪ではなく地方で日本の文化を体験したいと思っているアメリカ人/ビジネススキルとして英語を習得したいが、教室に通う時間や費用を懸念しているビジネスマン

② 課題

  • アーリーアダプターに設定した顧客が抱えている課題の仮説
  • あくまでも仮説なので想像で構わない
  • 上位3つに絞る

例)就活中、都内での待ち時間が多いが、カフェで無為に時間を過ごすより有意義な待ち時間にしたい

②’ 既存の代替品

  • ①’で記載したアーリーアダプターが、現状ではどのように課題を解決しているかを記載
  • 真っ先に思いつくのは競合サービスだが、サービス以外に、個人で解決している場合もある
  • 代替品が存在しなかった場合、もしかしたらその課題は誰も課題と思っていない、解決する必要のないものかもしれない、ということを考える

例)暇なサークルの同期と電話で状況シェア/リラックスするため本屋やカラオケで気分転換

③ ソリューション

  • 課題に対応するソリューションを記述する
  • 課題同様、3つに絞る
  • 課題仮説の検証次第ではっきりするので、まずは現時点でのアイディアを書いておく

例)就活で待ち時間ができたら、周囲にいる就活生とのマッチングができるアプリを作り、情報や刺激を与えあえる時間を提供する

④ 収益の流れ

  • ビジネスモデルの収益となる部分を記述
  • 長期的な将来の予測よりも、直近で検証できるものを書く
  • ここで書いたマネタイズのポイントを、実際にMVPで実験することになる

例)10万円/月 200円/月の会員制にし、まずは2ヶ月で500人の登録者(課金ユーザ)を獲得したい

⑤ 独自の価値提案

  • 顧客に最も刺さるであろう言葉を書く
  • 他のサービスでは満たせない価値を言葉で表現する
  • サービスの機能ではなく、顧客目線での魅力を記述するように注意する

例)コーヒー1杯のお金を、有意義な時間に変える。未来を開く、仲間を作ろう。 (ちょっと寒いですね、すみません。)

⑤’ ハイレベル・コンセプト

  • このプロダクトは、「x の y」のようなもの、という例えを書く
  • 顧客にわかりやすいような例えで表現する
  • 思いつかない場合は一旦空欄にする

例)このプロダクトは、「就活生同士のソーシャルランチ」のようなものである

⑥ チャネル

  • どのチャネルを利用して顧客を確保していくかを記載
  • やっていくうちに見えているので現時点での想定でOK
  • 自分のバックグラウンドとリンクしているチャネルの方がより納得感がある

例)まずは部活/サークルの後輩に勧めてみて、使ってもらうことから始める

⑦ 主要指標

  • 仮説の検証状況を示す、定量的指標を記載
  • KPI/KGIなどでも良いが、AARRR指標を利用すると整理しやすい

例)最初の3ヶ月の目標値を記載

  • 獲得: ユーザ登録(1000人)
  • アクティベート: ポートフォリオ登録(700人)
  • 定着: 就活仲間を見つける(500人)
  • 収益: 課金(400人)
  • 紹介: 他の就活仲間に利用をすすめる(300人)

⑧ 圧倒的な優位性

  • 他者には真似できない理由や強みを記載
  • 書くのが非常に難しいため、初期段階では空欄でも良い
  • 優位性が後々わかってくるケースもあるので、その際に埋める

例)就活生のお財布事情を考慮した費用… (この項目は個人的に一番難しさを感じています。)

⑨ コスト構造

  • プロダクト(MVP)を構築してローンチし検証が完了するまでのコストを計算
  • 将来かかるコストを計算するのは難しいので現時点で見えているコストを基準に考える
  • 収益とコストが算出できたら、損益分岐点を記載する

例)

  • サーバー費用: 5千円/月
  • 開発費: 50万円(自分で1ヶ月でやる)
  • 損益分岐点: 課金ユーザ合計 2500人月 (できれば半年で回収したい)

書き終わったら

書き終わると、ターゲットや課題、収益構造などの具体的なイメージが湧いてきます。この時点でしっかりイメージできないもの、失敗が想像されるものは、一旦寝かせておきます。完全ボツにしてしまわない理由は、あとから追加でアイディアが出てくる可能性を潰さないためです。

逆に、これはうまくいきそう、と感じたものがあれば、まず周囲の人間(同僚や上司、課題の対象となりうる友人など)にピッチで話してみましょう。賛同してくれたり、良い批評やリスクについての指摘をしてくれる場合もあるので、フィードバックを盛り込んでキャンバスを更新していきます。

一旦自分の周囲へ確認したら、次はキャンバスに描いた、「①’アーリーアダプター」にインタビューします。インタビューは、仮説が確実なものになったと自信が持てるようになったり、新たな課題や改善点を発見にとても有用です。しかし、インタビューを行う際には、下記の点に注意してください。

  • 無意識的に都合の良い答えを引き出してしまうことを避けるため、回答を誘導する質問は避ける
  • クローズド・クエッションだと回答を誘導してしまうので、なるべくオープン・クエッションで
  • 課題を抱えていて、それを解消したい顧客がいる、ということの検証に専念する (インタビューしているとソリューションの深追いをしてくなるが、これは避ける)

ニュートラルな立場から意見がほしい、と思っていても、閃いたナイスアイディアと、多少時間をかけて作ったリーンキャンバスを、どうしても認めてほしくなるものです。そのような心理が働いた際にも意味のあるインタビューとなるよう、上記の心がけは大切です。

さて、ここまでくると、自分のアイディアがどれだけ求められているものか、モノになりそうなものか、ワクワクしてくるのではないでしょうか。わずか一枚のキャンバスと、検証によりサポートされた仮説は、モチベーションを更に上げ、プロダクト開発とサービス運営の成功の後押しをしてくれます。

リーンキャンバスを描いてみましょう

長い文章となってしまいましたが、いかがだったでしょうか。アイディアが浮かんだら、まずリーンキャンバスを描いてみましょう。キャンバスは、アイディアのイメージの共有を容易にし、プロダクトの仮説を適切に検証する下地を作ってくれます。

何十枚にも渡る事業計画書を書く必要はありません。1枚のキャンバスに15分ほどで、そう、この記事を読み終わるよりも短い時間で、キャンバスを描きましょう。

キャンバスによって事業のイメージができたら、次はプロダクトの開発です。

開発のご相談は、ぜひこちらまでお問い合わせください!