新規事業を立ち上げるなら、完成を目指すよりMVPを作ろう

mofmof inc.で受託開発・新規事業立ち上げにトライしている岩井です。今回は新規事業立ち上げ期において開発が果たす役割と、大切にすべき考え方について語っていこうと思います。

目次

新規事業立ち上げ期における開発

新規事業立ち上げ期に最初に目指すゴールは「事業化するか否かを判断する材料を得る」ということだと思っています。正しいやり方で得た数字や根拠に支えられ立ち上がった事業は、その後も大きく成長していく可能性が高いです。材料を得た結果その事業を諦める判断に行き着いたとしても、それは一旦ゴールに到達したと胸を張って言ってよいです。

具体例として、僕が先日立ち上げにチャレンジした「VR酒屋」での検証フェーズを簡単に紹介します。

課題仮説

ソリューション仮説

仮説としては上記のようなものを立て、インタビューによって検証を行いました。 新規事業における開発は、上記の検証が完了した上でソリューションを体現するプロダクトを作ることが役目となります。

MVPを作ろう

上記でいう”ソリューションを体現するプロダクト”とは、すなわちMVP(Minimum Viable Product 最小の実行可能製品)と呼ばれるモノを指します。通常の製品と何が違うのか、見ていきましょう。

VR酒屋が解決したい課題は、実店舗と通販、それぞれが抱える欠点でした。ソリューション仮説は、どうすればそれを解決することができるかを挙げたものになります。

「VR酒屋」それ自体は無限の可能性を秘めたソリューションです。例えば酒蔵風のシチュエーションを再現し、そこで酒を買うことができる。例えば地酒それぞれを生産している土地の景勝地を再現し、「そこならでは感」を感じることができる。例えば派手に目を惹く効果等のVRならではなプロモーション表現で商品を魅力的に演出する。人が想像できることは技術的にはなんでも表現可能でしょう。完成品はそれはもう素敵なプロダクトになること間違いなしです。

しかし、その「俺が考える最高に素敵なプロダクト」が実現したとしても、消費者がそのプロダクトを利用してくれるとは限りません。使ってもらえなければ、そのこだわりにかけたお金と時間はただ楽しかっただけで終わってしまいます。

ではどうすればよいのか? そのプロダクトが必要とされるかどうかを最短ルートで見極めましょう。「課題が本当に存在するのか」「それを正しく解決する方法は何か」「解決方法を実現するプロダクトはどんな形か」を明確にし、それを忠実になぞるというフローを守ればよいのです。

通常の製品であれば要望に応じてブラッシュアップを重ねていけばよいですが、MVPは「解決方法を実現するための最小限のプロダクト」であるという点が異なります。極端なものでは、プロダクトを作らず検証サイクルを回したMVPの例もあります。

VR酒屋の例では、「実店舗の購買の楽しみを再現する」「通販である」「実店舗以上のマーケティング表現ができる」を検証するための、動作する最小限の製品を開発しました。

開発に失敗せずとも事業は失敗する

素敵なプロダクトが完成するという「開発の成功」と、それが世の中に受け入れられ収益を生むという「事業の成功」は別物です。しかし、意識して開発に取り組まないとどうしても「考えうる限りの最高に素敵なプロダクトを作る」という方向に進んでしまいがちです。ここが新規事業立ち上げの落とし穴であると言えるでしょう。

VR酒屋の例で考えてみましょう。わかりやすくするために、「VR通販でお酒を買いたい人はこの世に存在しない」という前提を置いてみます。

  1. VRで酒屋を作るぞ。表現はいくらでも魅力的にできるし、実店舗と通販のいいとこ取りができる。絶対ウケるぞ。いい製品を作ろう。
  2. まずは通販機能だな。瓶をクリックすると詳細画面が出て、「買う」ボタンで買えるようにしよう。
  3. VRの利点がほとんど活かせてないな。PCと比較して画面サイズに縛られないということと、実店舗では表現しづらい要素を追加しよう。
  4. ここまででベースになる機能とVRならではな表現はできたけど、あんまり見た目が魅力的じゃないから使ってもらえないかもな。もっと綺麗にしよう。
  5. 詳細パネルも見辛い気がするからフォントを変えてみるか。おお、見やすくなった。いいね。
  6. 日本酒だけじゃなくてワインやウイスキーも並べよう。選択肢が多い方が使ってくれる人が多いよね。
  7. 利用者目線で考えると登録・ログインはメールアドレスだけじゃなくてGoogleとかFacebookとかでもできた方が便利だな。実装しよう。
  8. 店舗の雰囲気もいろいろとバリエーションがあったほうが楽しいな。5パターンくらい用意して、ランダムで表示されるようにしよう。

というわけでステップ8まで数ヶ月かけて磨きあげると、素敵なプロダクトが完成し開発は成功と胸を張れます。「こんな面白いもの作ったんだよ」と言いふらしたりもできます。

が、「VR通販でお酒を買いたい人はこの世に存在しない」ので一切収益を生まないという結果になります。つまり事業は失敗です。

一方、上記のフローでいう3が完了した時点(2週間くらい)でプロダクトの需要検証を行えば、上記と同じ結果が短期間でわかります。事業は失敗ですが、冒頭で述べた「新規事業立ち上げ時に最初に目指すゴール」に比較的少ないコストで到達することができます。

このように、時間とお金をかけて開発を成功させても、最小のコストで開発を切り上げても、明らかになる結果は同じ場合が多いです。であれば最小コストで検証し方向転換や撤退の判断を下した方が有意義ですよね。

まとめ

新規事業の立ち上げの際は検証をきっちりやっていこうだとか、そのために最小限のプロダクトを目指すべしということを語ってきました。プロダクトに情熱を注ぐのはとても良いことであり、メンバーはみんな良いものを作ろうと思って開発に臨みますが、事業の成功を目指すのであれば、ものづくりではなく、あくまでも事業の成功にフォーカスするべきです。

mofmofではそういった考え方にフィットする開発手法であるアジャイルをベースにした手法を取り入れ開発を行っています。プロジェクト開始前には「何を達成すれば成功と言えるのか」を明確にするイベントを設け、毎週出来上がった部分をリリースし、都度プロジェクトの進む方向を確認し舵取りを行います。いくらでも魅力的な機能案や、見せ方・デザインは思いつきますし、全て盛り込みたい気持ちでいっぱいですが、それを抑えて「事業の成功」に目を向けます。チームの全員がこの意識を共有し、開発の優先度・取捨選択を手伝うことの方が重要だと考えているためです。

プロダクトの責任者としても・エンジニアとしてもジレンマがある部分ですが、これを意識してプロジェクトに取り組むことで、より良い結果にたどり着けるでしょう。

以上、新規事業立ち上げ期の開発についてでした。