KPT法の活用で振り返り会を効果的に!【実践編】
2021.04.28新規事業やプロジェクトを運営している方であれば「KPT」という会議の進め方を聞いたことがあるのではないでしょうか。
「普段の会議とやることは変わらないのでは?」
「わざわざ新たなフレームワークを導入するのが面倒」
このようにKPTを知っていても、活用するのが億劫に感じる方もいらっしゃると思います。今回の記事は「KPTの概要を理解した上で、実際にファシリテーターとしてKPTを実践できるようになる」ことを目的として書きました。
KPTの定義やメリット、ファシリテーターとしての注意点、KPTの実践例の3点を紹介していきます。
もくじ
KPTとは?基本事項を確認!
KPTとは、プロジェクトの振り返りのための手法の一つとして知られています。このKPTという考え方はAlistair Cockburn氏が「Reflection Workshop」の中で提唱した内容に基づいています。
そこで振り返りで重要なのは以下の3点であると主張されています。
- What we should keep.(続けるべきこと)
- Where we are having ongoing problems. (抱えている問題)
- What we want to try in the next time period. (次にトライしたいこと)
「Keep=良かったこと」「Problem=悪かったこと」「Try=次に試すこと」、この3点を整理することでプロジェクトの現状を把握できます。 **
KPTを導入することのメリットとは?
KPTを導入することで得られるメリットとして以下の3点が挙げられます。
1.チームとしての課題発見ができる
KPTによってプロジェクトに関わる全員がそれぞれの立場から課題を報告します。
この振り返り会を通して個人ではなかなか気づけなかったチームとしての課題を把握できます。チーム内に経験豊富な人がいれば、事前に起こりうる課題の早期発見が期待できるでしょう。
2.意見交換の場
KPTを導入することで「参加者全員が気軽に意見交換の場への参加すること」が可能となります。普通の会議では立場や人間関係によって意見を発言する人が偏りがちですが、KPTでは各自が問題や課題を自由に書き出した上で、話が進んでいきます。そのため、反対意見、意見の対立を気にすることのない、活発な意見交換の場の創出が期待できます。
3.社員の間で解決策と課題を共有できる
KPTを通して課題を共有すると、チームとして一体感が生まれてきます。
会議ではプロジェクトの課題や問題点について相談することはあっても、メンバー個人が感じている課題を共有する機会はあまりありません。各自が抱えている問題を理解し合うことでメンバー同士の信頼関係の再構築にもつながります。また自分では思いつかなかった解決策が他のメンバーの意見によって見つかるケースもあります。
振り返り会の進め方とファシリテーターの注意点
では実際にKPTのための振り返り会を行っていきましょう。
会議でKPTを導入する場合、以下の流れに沿って会議を進行すると良いでしょう。
- (1) テーマを決める
- (2) 思い返す
- (3) うまくいった行動を確認する
- (4) 問題を洗い出す
- (5) 問題の原因を検討する
- (6) 改善策を考える
- (7) 試したいことを考える
- (8) 試すことを選択する
- (9) 試すことを合意する
※振り返り会ので注意点、グランドルールなどの詳細はこちらの記事を参照してください。
KPT法は以下のようなフォーマットで行います。
ファシリテーターは何をする人なのか
次にファシリテーターがKPT法を会議に導入する際の進め方と注意すべき点を紹介します。会議を円滑に進めるためには「意見を出す人」以上に「意見をまとめたり、参加者に発言するように促す人」が重要になってきます。それがファシリテーターの役割です。
基本的にはファシリテーターは自分の意見を表明せず、議論の流れを導くことに徹する必要があります。ファシリテーターがKPTを用いた会議で注意すべきことは以下の3点にまとめられます。
1.進行管理
「まずはテーマを復習してみましょう」「これから10分間はKEEPに対する深堀タイムです」といった進行管理
ファシリテーターをしていると議論が白熱して結論にまでなかなか至らない場面に遭遇します。「案として出たtryを実行に移すのか」「うまくいったtryを続けて行うべきか、その場合誰が担当するのか」といった話し合いで時間がかなり消費されることもあります。
その場合、ファシリテーターが優先事項を明確に提示して、「議論を深掘りする」「いったんその議論を放置する」などの進行管理を行いましょう。また会議は時間が限られていますから、時間管理も忘れないように。
2.発言の催促
「この問題について誰が詳しいですか」「詳しい◯◯さんはこの問題の原因をどう思っていますか?」といった発言の催促
KPT法では事前に紙に自分の意見を書き、ホワイトボードなどにその内容を貼るという形式で会議が進行していきます。しかし細かい話し合いになっていくとどうしても発言者に偏りが生まれてしまします。そこで、ファシリテーターはメンバーの様子や表情を見て発言機会を与えましょう。
- 「この問題は〇〇さんの担当だけど、現状困っていることはありますか?」
- 「今このproblemに対する解決策が議論されているけど、〇〇さんから見て最も適している施策はどれですか?」
ファシリテーターが介入しなくてもバランスの取れた話し合いが行われるのが理想です。一つの議題に対して全メンバーが一度は発言できるように配慮したいですね。
3.合意形成
「このtryの一覧を実際に実行できると思う人は、手を上げてください」といった合意形成の促し
最後に振り返り会での決定事項に対して参加者に合意を求めます。「誰がどのtryをいつまでに実行するのか」という具体的な行動プランにまで落とし込むことが理想です。合意には「同意」と「そのtryの実行を支援する」という意味が含まれています。担当者だけでなく周囲のメンバーにも合意をしてもらうことで、担当者はチームに助けを求めやすくなるでしょう。
新規事業に関するKPTの実践例を紹介!
最後に実際に行った「新規事業に関するwebコンテンツの運営方法」をテーマとしたKPTを実践例として紹介します。
前回の会議で挙げられたtryの確認
【実際の進行】
ファシリテーター「前回の会議でtryとして挙がった施策の報告を各自行ってください」
Aさん 「学校別の対策記事は、実際にやってみたら、検索上位を達成できSEOの改善効果がありました。今後も継続していきたいと思います。」
Bさん「効率的な勉強法の記事を執筆しましたが、競合記事が多く成果が出ませんでした。別の施策を考える必要があると思います。」
Cさん「地方の学校の特集記事を書こうとしましたが、リサーチに相当な時間がかかりまだ手がつけられていません。」
ファシリテーター「では、Aさんの施策は Keep としましょう。Bさん、Cさんの施策はいったんKeepから除外しましょう。」
初めは前回の振り返り会でtryとして挙げられた内容の成果を確認します。
期待された成果が出た場合、それはKeepとして継続します。参加者は「成果が出なかった」「実行に移せなかった」施策に関しては率直に報告するようにしましょう。ここでの議論に時間を使うのはもったいないです。
Keepの出し方
【実際の進め方の例】
ファシリテーター「前回の会議から現段階までで、成果の上がったもの、成果が期待できるものを付箋紙に書いてください。1人 5案、提出しましょう。」
メンバー 付箋紙に書く
ファシリテーター「では、1人1枚ずつ順に貼ってください。似たような内容のものは、近く に貼ってください。」
メンバー 前に貼る
この段階ではKeepに限定して案を絞り出すことが肝心です。
先述したとおり、KPTでは他の人の意見の影響を避けるため、事前に個別の意見を付箋紙に記述してもらいます。そのため、普段は会議で積極的に発言できない人も自分の考えを発信しやすくなります。会議に参加する人数によって提案数は調節しましょう。
Problemの出し方
【実際の進め方の例】
ファシリテーター「次に付箋紙に自分の抱えているプロジェクトに関する不満や問題点を書いてください。これから起こりうる問題が思いついた場合はそれも書いてください。先ほど同様、1人 5つは書きましょう。」
メンバー全員 付箋紙に書き、前に貼る。
ファシリテーター「『記事のジャンルによって』という文言がありますが、具体的にはどのようなジャンルを指していますか?」
メンバーA 「ここでは弊社のサービス紹介に関連する記事を意味しています。」
ファシリテーター「では、そのように修正しておいてください。」
Problemを考える際には、なるべく具体的な事例を挙げると全体に伝わりやすいです。
- 「記事のジャンル」→「弊社のサービス紹介に関する記事」
- 「CV率が低い」→「ここ3ヶ月のCV率の平均を下回っている」
このように「具体性の伴った」「数値が明記された」内容を書くことでtryが考えやすくなります。また伝え手と受け手との誤解を避けることもできます。
Tryの出し方
【実際の進め方の例】
ファシリテーター「ここまでで皆さんが提出された Keep と、Problem に番号をつけます。改善策を付箋紙に書くときには該当する番号をつけてください。」
メンバー全員 付箋紙に書く
ファシリテーター「書いたら、番号ごとにまとめて貼っていきましょう。まずは、KeepとProblemに対するTryを貼っていきましょう。」
メンバー全員 前に貼る
ファシリテーター「Problemの8番に対する、改善策がまだないですね。みなさん、考えてもらえませんか。」
今まで思いもよらななかったアイデアを実行することは非常に楽しいものです。しかし、KPTの場合では「自社の強みを強化する」「問題点を改良する」ためのTryに絞って考えることが重要です。
Tryが思いついたら、Keep、Problem、に番号を振った上で、それに該当する番号を明記してTryを書いていきましょう。Problemが多ければ、ファシリテーターの方が優先順位をつけ、重要度の高いProblemに限定して、改善策・対処法を考えるように工夫すると良いでしょう。
まとめ
今回の記事ではKPTの基本事項、KPTでファシリテーターが気をつけるべき点と進め方、そしてKPTの実践例を解説しました。新規事業を立ち上げる場合、Try(新たな施策)にばかり目がいき、そのTryがどのような成果をあげたのか検証されないことが珍しくありません。
また全てのTryを実行することは不可能なので、チーム全体で優先順位を決めるという点でKPTは有効です。新規事業の運営で奔走している方はKPTを導入してみてはいかがでしょうか。