株式会社ロックガレッジ 岩倉 大輔さま
実証実験までたった2ヶ月!成功に導いたポイントは「スピード」と「柔軟性」
2021.03.15
岩倉 大輔 様
代表取締役
千葉大学大学院 工学研究科 博士課程(制御工学)在学中に自身の研究成果を元に株式会社自律制御システム研究所創業に寄与し、技術統括の立場で同社を牽引する。
ミニサーベイヤーコンソーシアム 理事、千葉大学工学部特任助教、株式会社自律制御システム研究所 取締役等の役職を歴任ののち、2018年株式会社ロックガレッジを設立。
現在はドローンスタートアップの技術顧問などを務めながら自社のソリューション開発に取り組む。
INTERVIEW インタビュー
今年1月mofmofは、ドローンと複合現実(MR)を駆使し災害現場で要救助者を捜索する「3rd eye ドローン」の実証実験に技術協力させていただきました。
参考:プレスリリース/ドローン×ARグラスで災害現場の要救助者を発見する!mofmofが技術協力したAI・ARを駆使した 「3rd eyeドローン」1月8日に実証実験を実施
今回は、実際に開発に携わった弊社代表原田とともに、開発元である株式会社ロックガレッジ 代表取締役社長の岩倉様に、実証実験に向けてmofmofと行った開発に関して、お話を伺わせていただきました。なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、写真撮影時のみマスクを外しております。 (以下敬称略)
御社で展開しているサービスを教えてください
岩倉:
弊社は現在、ドローンを使ったソリューションを展開しています。
自社製品としては、今回実証実験を行った3rd eye ドローンといった、ドローンを使った人命救助・人命捜索のシステムを開発しています。
また、ドローンを取り入れたサービスを作りたい会社のサポートといったドローンシステムの受託開発案件も担当しています。
「3rd eye ドローン」開発のきっかけと背景を教えてください
岩倉:
少し話が遡るのですが、私は大学時代からドローン研究に携わっており、研究室でドローンを開発していました。
大学時代は、センサーもGPSも貧弱だったこともあり、飛ばすだけで精一杯。それだけで論文が書ける世界でした。ただプロペラを回すことだけじゃなくてプロペラの回転数を逐次センサーの値を使って微妙に調整しないとしっかり飛んでいけないのです。それを数式を使って動かす制御工学を研究する中、大きなきっかけの出来事が発生するのです。
それがちょうど10年前の2011年に発生した東日本大震災でした。
東日本大震災が発生した時、自分の研究のためにもドローンを使って被災地の様子を見に行こうと準備をしていると、当時の教授が「ドローン持って一緒にいくぞ。」と。そこで教授と一緒に開発中のドローンを持って向かったのです。
その被災地では、想像以上のひどい景色が広がっていたんです。
未曾有の大災害。なす術なく命を落とす人がいたということを、現実的な目の前の光景として感じられました。その時、いずれ自分の研究してるドローンで災害時の人の命を救ってみたいと思ったんです。
その後は株式会社自律制御システム研究所で、技術の責任者を担当し、当時は直接のソリューションには関わらず、ベースになる技術を作っていました。
「困っている人を助ける」といったことはその当時は関われず、会社の拡大とともに自らの行いたい開発とのずれを感じて退職し、株式会社ロックガレッジを起業しました。
自分で会社やるのであれば、「人を助けられるものを作りたい」と思いまして、災害用ドローン分野に足を踏み込むことにしました。
mofmofはどこで知りましたか
岩倉:
あるベンチャーキャピタルの方から紹介していただきました。とはいえ紹介いただいたのは結構前なんです。オンライン会議をする中で、「製品のプロトタイプをクイックに作れる会社があるのでよかったら紹介するよ」といった形でご紹介いただきました。その際は開発面でそのニーズはなかったので、記憶の片隅に残っていたんです。
今回の開発ではおよそ2ヶ月という短期間で、実証実験をするためのシステムを作らければならなかったのです。そこで御社のことを思い出しまして、このタイミングで実際にベンチャーキャピタルの方に繋いでいただきました。
そのため、御社を知ってから実際にお願いするまでは、2年ほど期間が空いていたかと思います。
紹介いただいた方が東北に関わっているので、てっきり御社も東北方面に拠点を置いている企業かと思っていたんです。実際にお話を聞いてみて東京の会社と聞いてびっくりしました。笑
高梨:
mofmof以外に開発パートナーは探されたのでしょうか?
岩倉:
以前の開発の際にお世話になった企業に問い合わせはしました。
ただ、やはり開発スケジュールを考えると期間がみじかく、他案件を抱えているため開発リソース的にも厳しいということでやんわりと断られてしまいました。
mofmofを選んだきっかけや決め手はありますか
岩倉:
やはり「mofmofさんなら素早く開発できる」ということは決め手として大きかったです。
実証実験の直前には、少し無茶なスケジュールにも付き合っていただいたので、本当に助かりました。
高梨:
なるほど、mofmofとしてはお話を聞いた段階から無謀なスケジュールだったのでしょうか?
原田:
最初にお話を伺った時は、全然無茶ではないかなとは思いましたね。ただ、知見の問題から社内リソースだけでは開発することが難しいという懸念はまずありました。
期間的にはその時点ではトータル3カ月弱ほどあるから問題ないと思って構えてたんですが、その後少しスケジュールが変動してちょっと焦りましたね。
どこかで開発がつまずいたら危なかったかなと。余裕はなかったですけど、無謀ではないといった感覚でしょうか。
今回の開発ではどういった立場で関わりましたか?
岩倉:
私からは大まかに「こういったことを開発したい」ということをお伝えして、週1でミーティングを開いてもらっていました。
また、slackを通じて状況を共有しながら本番に間に合わせるように動いていただきました。
開発期間中に印象的だったことありますか
岩倉:
実証実験の前日まではずっとリモートでそれぞれが作業を行っていたんですが、実験日の前々日に実際に集まって合わせ込みをしました。
その時にホテルの部屋でじっくりと気になる点やわからないところをお答えをいただいて非常にありがたかったです。
夜中まで真剣にそれぞれが取り組む様子が、学生の頃にロボットをデモンストレーションする前日のように妙に熱くて、懐かしくなりました。
逆に開発期間中、少し困った経験はありましたか
岩倉:
私の方で行わなくてはならないタスクが進まなかった部分がありました。
完全にお互い分離して開発が終えられるという訳ではなく、私の担当箇所が終わっていないと他が進まないというタスクがあったんですよね。とはいえなかなか私の時間が取れず・・・。
直前になんとか仕上がりました。
mofmofに依頼する前に課題だったことはありますか
岩倉:
弊社にはMR関係の知識やノウハウを持ち合わせていなかったので、そこを短期間でまるっとお願いできたのは助かりました。
時間をかければチュートリアルなどを勉強しながらできたかもしれないのですが、今回の開発期間で全てを行うのは絶対に無理だったと思います。
実際開発を依頼してみて良かったなと思う点はありますか?
岩倉:
先ほどもお話ししましたが、やっぱり柔軟に動けるのはとてもありがたかったですね。
短期間での開発であったこともあり、ある程度フレキシブルに対応してもらわざるを得ない場面が生まれてしまい、その点合わせてもらえるのは助かりました。
実証実験の直前にはチームメンバーみんなで集中して遅くまで作業してもらえて、なんとか実証実験に間に合わせることができたと思います。
また、本番当日に現場を捜索する対象の遭難者役も快く引き受けてくれてすごくありがたかったです。強風ですごく寒かったのでちょっと申し訳なかったですが。
高梨:
ちなみに、ドローンを飛ばして実験対象を探すにはある程度時間がかかるものなのですか?
岩倉:
いえ、ドローンが飛んでしまえば、2〜3分で実証実験は終了します。ただ、当日は無線関係でフライトの準備が整うまで想定以上に時間がかかってしまい、寒い中お待たせしてしまったんです。
今後に向けて災害用ドローンの展望はありますか
岩倉:
業界としては、扱いやすかったDJIという機体の利用が減少しています。そのため、DJI用に作ったシステムは使いづらくなってきたので変えていこうと思っています。
今までは「災害用ドローン」という分野としてはまだまだお試し期間でした。これから本格的に実用化期間に移っていくので、実用化可能な製品として価値のあるものを作っていきたいです。
今回実証実験をした3rd eye ドローンは、ドローンとHolorens 2をどちらも駆使しなければならずある程度使いこなすにはトレーニングを必要とします。
そのため、実践で使うには現実ではないかなと感じる部分もあります。もっとARに寄せて位置と姿勢をGPSと内界センサーを活かした仕様にアップデートすることやデバイスを変更することも視野に入れつつ、実用化に向けて更なる開発を進めていきたいと思っています。
今後のmofmofに期待することはありますか
岩倉:
またぜひお願いしたいです。
今回の開発からさらにレベルアップしたシステムを一緒に開発したいですね。
音声認識の精度は上がってきてそれでサービスが十分なクオリティで作れるようになってきたこともあり、音声認識を使った開発も面白そうですね。
ロボティクスも時代の流れとしてかなり早く、それを音声でコントロールするのはかなり主流になるのではないでしょうか。
最後にmofmofに開発を依頼しようか悩んでいる方におすすめのポイントを教えてください
岩倉:
スタートアップ企業やベンチャー企業は、短い期間で開発することが往々にあると思います。
mofmofさんは、短い期間ながらも依頼者のニーズに応え、柔軟な動きを可能としており、「素早く欲しいものを作る」という面は非常に強みだと思います。
岩倉様、お忙しい中ありがとうございました!
開発パートナー:フリーランスエンジニア田中さんにもお話を伺いました
今回の開発では「HoloLens 2」というデバイスを使った開発とあり、開発に対する知見が現状のmofmofだけでは足りませんでした。
そのため、開発パートナーとして ワンフットシーバス という屋号でフリーランスエンジニアとしてご活躍中の田中正吾さんにも開発チームに加わっていただき、リードしていただきました。そんな田中さんにも開発に関してお話を伺わせていただきました。
(マスクでの様子も写真を撮らせていただきました!)
今回の開発時の立ち位置はどういった立場でしたか?
田中:
HoloLens 2 のアプリケーションの開発をメイン担当の立ち位置でした。
そして、HoloLens 2 についての開発ナレッジを共有する立場でもありました。
開発はどのように進めていきましたか?
田中:
今回の開発はおよそ1ヵ月という期間で制作しました。
原田様の提案により週1回のミーティングを実施。ミーティングにて進捗を報告し、タスクはTrelloで管理していました。プロジェクトの進め方の意識合わせがスムーズにスタートできたのは、開発に集中できてとてもよかったです。
前半の2週は、HoloLens 2アプリケーションの基本設定や、共同開発のためのGitHubへのアプリケーションファイル設置といった準備が中心でした。
ミーティングではHoloLens 2 の録画機能を活用しました。事前にアプリの挙動をアップロードし、オンラインミーティングの際にチーム全体で進捗を共有でき、具体的な議論を行えました。
また、位置情報の計算といった基本的な機能の検証を mofmof のと分担し進めつつ、具体的な実装がドローン側ともズレがないかロックガレッジ岩倉様と密にやりとりしました。このタイミングでチームで大事な仕様を共有しながら進めたことで、本番で検証する際にも不具合が起きた箇所をすぐにディスカッションできました。
3週目は、いよいよドローン側とAPIを介して位置情報の連携する段階です。API連携を柔軟に行うため Aruze に設置した Node-RED を使って仮のデータである程度検証して、実際に本番のAPIに差し替えたときもスムーズに行うことができました。同時に、表示の際のインターフェースや細かな挙動を HoloLens 2 実機と開発ツール Unity の間を行き来して詰めていきました。
最後の4週目は、当日の段どりの意識合わせとブラッシュアップを行い実地検証に臨みました。実地検証では、やはり現場に行かないと見えない様々な気づきがありリアルタイムに調整しながら進めました。
たとえば、HoloLens 2 標準のアプリケーション設定だと一定以上遠くのオブジェクトが見えなくなる設定になっていて、これが現場の広大な敷地での検証で、ようやく「遠くの救助者が出てこない」といった現象であらわれました。このあたりは、チームのみんなで様々なアプローチで調査・検証を行って解消に動けたのは良い思い出です。
開発に携わってみた感想を教えてください
田中:
はじめて御社と関わって、およそ1か月という短い制作進行でしたが、mofmof のみなさんと密にコミュニケーションをして進めることができ、心強かったです。
私自身 HoloLens 2 開発というと一人で作ることがほとんどで、今回のようにチーム開発でどのように連携できるか未知数でした。しかし、GitHubでソースコードを共有し、互いに仕様を共有しながらディスカッションすることで、いままでの開発のように連携して進められたことは、良い経験となりました。
田中さん、お忙しいところありがとうございました!
(左からワンフットシーバス田中さん、mofmof原田、ロックガレッジ岩倉様)
インタビュアー:高梨
岩井
エンジニア
稼働時間が大きく確保できないという制約の中、サポートという立場で参加させていただきました。
元々VRやARの開発経験があったので、今回のMRを使った開発もスムーズに対応することができたのではないかと思っています。
今回の開発にあたって、一番の印象は「ただただ楽しかった」ということです。
アイデアをお伺いしたときから、社会的意義や構想ももちろんですが、特に採用技術にテンションが上がりました。これはぜひやりたいなと。
個人的には既存業務で手一杯であったものの、なんとかしてジョインさせてもらうことになりました。
普段担当する開発より多い人数で参加者の大半がエンジニアというチーム構成に加え、実地試験の前後は合宿をするという体験は、とても新鮮なものでした。
大変だったことは、事前に想定できる課題についてはできるだけ解消してから現地に入ったのですが、やはり現地でないとわからない課題が出てきた部分です。あとひたすら寒かったです(笑)
「翌日にはこの問題を解消しておかないといけない」という厳しい状況でした。その一方、クライアントさんと開発メンバーが一体となって開発に向き合う感覚は、とても刺激的で面白いものでした。
結果としてデモは成功し、ビジョンを形にして外部の方々へ伝えることができました。
お越しいただいたメディアの方々にも実際に現地でソリューションを体験していただきました。その際には良い反応をしてもらえたり、後日記事が掲載されるなどとても嬉しかったです。
極々短期間のプロジェクトでしたが、POさん、メイン担当の田中さんやそのほかの関係者の方々とうまく連携を取り、結果を出すことができました。
今回は期間が短かったこともありできる範囲での最善を目指しましたが、「もっとこうしたい」はたくさん残っていると思います。今後もまた関わらせていただけたら嬉しいです。